なんとめでたいご臨終
文章作成者
安藤圭祐
初めてこの本を手に取った時、この本に書いてある内容を「在宅医療に切り替え、満足して亡くなられた方のお話」なんだろう・・・くらいに思っていました。
読み終えてみて、はじめに思った『それ』は間違いではなかったのですが、それだけではなく、亡くなられた方のご遺族にとっても希望どうりで、満足でき、納得できる、『希望死、満足死、納得死』の数々と、亡くなられた直後に遺族の方がピースして写真に収まる”絵“がいくつも掲載されている、『在宅ホスピス緩和ケア』のリアルを見せてもらえる、感動の名著でした。
○実例の数々から学んだこと
まずは、「ところ定まれば、こころ定まる」という、本当に自分が”終の住処“だと感じられる場所で過ごすことにより、実際に申告された余命より遙かに長く命を繋ぎ止める事例が多いということ。
驚くことに、在宅ホスピス緩和ケアに切り換えてから、QOL(生活の質)が向上し、余命が伸びた事例は3割にも及ぶという話が出ていました。
これは、我慢していつ何が起きても大丈夫な場所に居て治療するより、自分が居たい場所で痛みを伴う治療などをしないで過ごす方が、確実に延命される方が増えるという、とてもすごい数字だと感じました。
と、同時に、まだまだ病院で働く看護師の中には在宅ホスピス緩和ケアの実情をわかっていない人が多かったり、退院自体を拒む医師が多いという事実もあるといくことが少し残念に感じます。
話は変わって、がんの告知の「する」「しない」についてですが、著者はがんの告知は絶対にしたほうが良いと言っています。
知らないことは不安を煽り、不安は免疫力を下げ、生きる気力を奪い余命はさらに短くなってしまうと。
気付いた時には死が迫り、やり残したことを悔やみ、無念さと後悔の中で旅立つのは真実を知るよりつらいと。
最後の最後に地獄の苦しみを与えてしまった後悔は、取り返しがつかないのだと。
本当にその通りだと思います。しかし、いろいろな事情や告知することの辛さを考えると、100%「絶対その方が良い!」のか、どうか、イメージがつきません。
著者である小笠原先生は告知の際は必ず患者さんの手を握ると言います。
1つは、気が和らぐのと、「大丈夫、気をしっかりもって」と想いを送るためだと。
もう1つの理由は脈を測るためだそうです。脈拍が140を超えるようなぐらい上がると、記憶にも心にも残らないそうです。
そして、在宅ホスピス緩和ケアで最後を迎えるかたは『ぴんぴんころり』という感じの亡くなり方が多いということ、亡くなる直前までは満足感があり、QOLが高まりぴんぴんしていると、しかし確実に病状は進んでいるので、ある日突然亡くなってしまうようです。
さらに驚いたのが、多くの方が亡くなる直前、逝くタイミングを自分でコントロールしてしているような事例が多かったのです。
そのような驚きを感じた事例を以下にまとめました。
○驚きのあった実例のご紹介
○末期の乳がんの事例
乳がんの場合、がんが末期になるとがんが飛び出して、その塊がボロッと落ちてしまう場合があるそうです。
その女性は自分のがんが少し小さくなったのを見て「かわいい、今が一番幸せ」と言っていた。
なかなか共感が難しい心境だと感じた。
○夫の笑顔が生きがいという女性の事例。
上記の乳がん患者の話の続きなのですが、がんの病状が少し収まり、尿道留置カテーテルを取れることになった女性が「取らないでください!」と、理由を聞くと「もし助けが必要になったら、90歳の夫がきっと私を助けようとする。夫が怪我でもしたら、私は辛くて生きていけない。夫の笑顔が私のQOLを高めているのだから。」と言って、カテーテルを外さない選択をしたのです。
非常に心の温まる話でした。
○冒頭でも紹介しましたが、亡くなられた直後に遺族の方がピースで写真に収まるという事例です。
この事例は本当に1つ2つでは無く、いくつもありました。
状況や病状は様々ですが、共通していることはどのケースの患者さんも、さらにはご遺族の方にとっても、共に『希望死、満足死、納得死』であったと、そういう場合は残された人は皆、幸せな気持ちになるようで、笑顔でピースの記念撮影を行うようです。
○余命3ヶ月という、がんの告知を受け、最初「死にたい、死にたい」と言っていた35歳の夫と2人の子供を持つ女性の事例
最後に亡くなられた際に、夫が言っていた言葉が、
「子供が泣いて帰って来た時も、もう起き上がることも出来なかった妻が、必死に起き上がって『お母さんはねー、今まで生まれてきて、自分が不幸だと思ったことは一度もないのよ』と、先生、妻は35歳で死ぬんです。幼い子供と離れなければいかないんです・・・妻の言葉を聞いて子供は胸を張って、毎日学校に行けたんです。先生嬉しいじゃないですか。妻を褒めてやってください!」でした。
そして夫は笑顔とピースサインで写真に収まっていました。
私の妻も現在35歳で子供もいる身として、とてもリアルに感じてしまい、なんとも言えず涙が出そうになりました。
そして、考えたくはないのですが、もし自分がこの夫と同じ状況になった時にピースサインで笑顔で収まるような、そんな妻との最後の時を過ごせるのかという部分は、全く想像ができなかったのです。
※『あくび体操』ご紹介
心不全の患者さんに有効だという『あくび体操』
あくびをするとリラックスします。リラックスすると血管が拡張します。あくび体操は血管拡張療法になるそうです。
手順
①まっすぐ立ち、両手を下ろしたまま、足を肩幅に開き、背筋を伸ばし胸を張る。
②両手を前からゆっくり高く上げ、大きく胸いっぱい空気を吸う。
③大きな口を開け、「あ〜あ」とあくびをしながら、あげた両手を左右に下ろす。
〔効果的に行う方法〕
1セット2回、1日3セット行う
ストレスを感じた時はすぐに行う
自然の空気を吸いながら行う
毎日行うことで効果を実感できるようになる
○最後に。
この本を読んで何か直接、遺品整理の事業に役立つのかというと、結論的には?ですが、もしこの本で掲載されている多くの故人のように、在宅での『希望死、満足死、納得死』を迎えられた方のご遺族様がいらっしゃった場合、故人の最後の様子を『笑顔』で聞いてみたいと思いました。
遺品整理 想いては、これからも幅広く様々な状況のご遺族と向きあっていきたいと考えています。